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■地域生活を支える福祉サービス−現状と課題−

●柿本誠さん(日本福祉大学社会福祉学部保健福祉学科教授)
みなさんこんにちは。日本福祉大学社会福祉学部保健福祉学科の柿本です。午後の部は各地域の現場で地域生活をまさに支えている方々からさまざまな実践をお話ししていただきます。
●「地域生活が豊かになるように−ホームヘルプサービス−」
市川知恵子さん(名張育成園コーディネーター)
名張育成園でコーディネーターをしています、市川です。本日は、私どもが展開しているホームヘルプサービスの実践と課題について、お話ししたいと思います。
★地域生活支援の柱
私はコーディネーター歴15年なのですが、いつもそれぞれの利用者にどんな支援をしたらよいか迷っています。そんな中、ホームヘルプサービスは徹底した個別支援と非定型性が利点のサービスだと思っています。本人に具体的にサービスを提供していくとき、それまでと比べて、ホームヘルプサービスによって支援の幅がぐっと広がりました。本人に個別的に直接的にサービスを提供していくことはまさにオーダーメイドで、組み合わせによってバリエーション豊かなものになります。21世紀の地域生活支援のすばらしいサービスの柱になると思います。
★取り組みの経過
現在私たちは、名張市とホームヘルプサービスの委託契約を結んでいるのですが、当初、名張市から出た要綱は、ファジーな部分を残した大変緩やかなものでした。そのとき市の担当の方がおっしゃっていたのは、できるだけ役所的な発想を避け、利用者の立場に立つために縛りを少なくしたのだ、というものでした。
一方私たちは、12年度のサービス開始に備え、11年の8月に滋賀県甲賀郡に視察に行きました。そこで幅広いホームヘルプサービスを学ぶことができました。ケースワーカーとヘルパーが利用者のサービスについて絶えず話し合うといった、ソーシャルワーク実践の共有がなされていましたし、本当に役に立つサービスを地域に育てたいという思いが伝わってきました。
名張市でホームヘルプサービスを開始すると、近隣からもサービス利用の依頼が出始め、近鉄沿線の青山町からも委託を受けることになりました。よいサービスは波及していくんだな、ということを感じました。
★サービスを育てる
ホームヘルプサービスが本当に使いやすい「道具」になるためには、サービスのイメージを変える必要があると思います。それには、サービスを知らない家族の意識を変えるために、的確な情報を積極的に提供していくことが大切でしょう。私たちもサービスを知らせる努力を重ねています。
また、しっかりとした相談体制とサービス実践評価のシステムをつくることも重要です。
徹底した家族支援をするためには、柔軟な対応と工夫が大切です。ホームヘルプサービスは家庭でのサービス提供が原則なのですが、知的障害に関しては、家族が疲れていて家庭でのサービス提供がふさわしくないケースもあります。家庭以外の居場所を確保するために、私たちは、地域の中に「プチクラブ」という家を設け、家族が疲れているときなどは、そこへヘルパーを派遣して生活を支えています。
★人材確保
人材の確保も課題だと思っています。特に、障害特性を理解する専門性のある人材、サービスの裾野を広げる意味でも多様な人材が必要です。
専門性については、自閉症やADHDといった個別の障害を理解しそれに対応できる専門性を求めます。すぐれた対人援助の技術をもった専門職の位置づけを明確にし、その専門性を極めていくことが大切だと思います。
しかし一方で、支援の仕組みを専門性だけに依存してはいけないと思います。多様な人材で支えることが、ノーマルな支援だと思います。その意味で、登録ヘルパーは重要です。私たちの登録ヘルパーは多くが地域の主婦なのですが、このサービスに参画することで地域が耕されるのではないでしょうか。彼女たちは、専門職では気づかない、ノーマルな視点を提供してくれます。
ちなみに私たちは、当初常勤ヘルパー1名でスタートしました。その後登録ヘルパーを募集していますが、なかなか定着しません。
★児童期の支援
児童期の支援こそが自立を育むと思います。その自立は、本人もそうですが、家族(特に母親)もそうです。児童期に自立できないと、成年期を迎えても母子ともに互いが離れるのが困難になってしまいます。
児童期にしっかりと支援するためには、障害程度にかかわらずヘルパー派遣をすることが必要ですし理想です。障害児が家庭にいる家族は、その障害程度が軽くても養育の問題などで様々な苦労があります。ぜひ、徹底した家族支援のために、障害程度に関係なく障害児の家庭にヘルパー派遣することを各市町村で実現してほしいと思います。
ちなみに名張市・青山町は、要綱に障害程度をうたっていないので、重度でない児童についても対応できています。
★必要なときに必要な支援を
サービスの量が問題になることがありますが、必要なときには必要なだけ支援するといった哲学がないといけません。現在年間300時間以上利用している方が2名いらっしゃる一方で、10時間未満の方も多くいます。つまり、300時間以上の方は必要だから利用しているのであり(行政も理解している)、登録だけでほとんど利用していない方は、いつでも利用できるサービスがあることで安心できているのだと思います。
ここで大量にサービスを利用することで施設入所を回避できたケースを紹介します。その方は娘さんとの生活に限界を感じ、施設に入所させたいと児童相談所にいらっしゃったのですが、本心は同居を続けたいといったものでした。そこで、とにかく目一杯在宅のサービスを利用することにしました。ショートステイの宿泊利用に併せてホームヘルプサービスも毎日7時8時まで利用しました。2〜3ヶ月利用してから、「施設入所はさせません」と決意されました。一方でサービスの利用も少なくなっていきました。お母さんが月間のサービス利用をご自分で管理(マネージ)するようになったのです。きっと必要な時期に必要なだけ大量のサービスを利用することで、生活に安心感が生まれたのではないかと思っています。
★課題
ホームヘルプサービスが21世紀の真の自立支援サービスになるためには、いろいろな課題があると思います。
まず「柔軟な提供」が基本だと思います。ただその時、他の社会資源の不足を代替しないことが重要です。例えば学童保育で対応しきれないものをホームヘルプサービスで対応することがありますが、「本当は違うよね」と確認しながら、ケアマネジメントの中で、本来あるべき社会資源をつくっていくという機能も必要です。ホームヘルプサービスがブラックボックスになってはいけません。
一方で、個別支援計画(ケアプラン)のもとで必要な量を必要なだけサービスを提供することを基本にすることが大切です。そしてそのサービスが有効に機能しているかという評価も必要です。サービスを提供することで問題を内在化させないようにしなくてはなりません。
利用者の力をエンパワメントしていく視点も大切です。利用者や家族がサービスを自らオーダーしていくように支援するのです。
いずれにせよ、ホームヘルプサービスが21世紀の個別支援の基幹になると思います。
★柿本さんからの質問
平成12年から開始されてから市役所とソーシャルワークを共有していたそうですが、そのコツを教えてほしいと思います。
★回答
私は日頃から地域にネットワークをつくって支援することを基本にしています。受けた相談で一人で解決できないものは、利用者の確認の上すべて関係機関に返して、一緒に相談するようにしています。その結果、市と信頼関係ができたのだと思います。
●「自分で選んだ暮らしの場−グループホーム−」
鈴木規正さん
(知多地域障害者生活支援センターらいふGH担当)
知多地域障害者生活支援センター「らいふ」でグループホームを担当しています、鈴木と申します。らいふでは、本人さんたちが地域で豊かに暮らせるよう生活支援にいくつかの柱があるのですが、今日はグループホームについて、お話しします。
★広がりの背景
グループホームがどのように広がってきたかお話しするにあたって、本人の個々のニーズをスタッフがどれだけ受け止めているかを考えてみたいと思います。
歴史的に見たときに、昭和30〜40年代には入所施設が増えていったのですが、生活の場面場面で「何かヘン」と思える疑問が出てきました。例えば、「レコードが買いたい」→「外出日は来週です」。「床屋に行きたい」→「理容師さんは来月きます」。「今夜はカレーが食べたい」→「みんなと一緒のメニューでないと困ります」。施設では、個人の希望が叶えられない現実があります。
そんな中で、生活の場の切り札と呼ばれてグループホームが注目されはじめました。当初はその設置がそれほど急速には増えませんでしたが、重度加算分の補助金が上乗せされるようになったことが転機となって、少しずつ地域に増え始めました。らいふもこの補助金によって、専属職員を置くことができています。
次にらいふのグループホームバックアップ体制をご紹介します。
★スタッフの役割
らいふは現在11軒のグループホームのバックアップを行っています。それぞれのホームに世話人が配置され、24時間・365日型のサポートをしています。ただし当然、世話人だけでは365日の支援は無理ですので、らいふのグループホーム専属職員がバックアップに入っています。世話人は月に8日の休日がありますので、ローテーションを組んでらいふのスタッフがホームに入るのです。
またスタッフの役割として、世話人の相談にのっています。世話人には毎朝らいふに出勤していただいているのですが、そこでホームでの課題をリアルタイムで聞くようにしています。世話人は孤独になりがちなのですが、悩みをひとりで抱え込まないようにしています。緊急時の対応も重要です。
らいふでは、他の法人のグループホーム世話人を交えて定期的に勉強会の企画をしています。また「本人の会」の企画も間接的に支援しています。
こうしたらいふのスタッフの対応が、きめ細かいグループホームのサービスにつながっていると思います。
★他のバックアップ体制
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巡回看護師
らいふでは、各ホームへ看護師が月に1〜2回巡回訪問し、住人さんの健康相談にのるとともに、緊急時の対応もしています。一方で世話人の健康上の悩みにも対応していただいており、心強い存在になっています。
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サポーター
らいふでは、サポーターと呼んでいる臨時のスタッフ・ボランティアの方が存在します。世話人が休みの時に対応していただいたり、夕食づくりや重度の障害を持つ住人さんのお世話を世話人とともにしていただいたりしています。また、年末年始でも帰省せずにホームに残っている住人さんと一緒に外出したり、ホームヘルプサービスが始まるまでは、休日の外出に付き添ったりしてました。
住人さんにとっては、近所から来るサポーターの存在は、地域で生活していることを実感するいい機会だと思っています。
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ホームヘルプサービス
今まで休日で外出するときは、ホームの住人さんみんなで外出していました。それぞれの方が、映画に行きたい、買い物に行きたい、コンサートに行きたい、と別々に希望を言っても、誰かに合わせなければなりませんでした。ところが、ホームヘルプサービス制度が始まり、個別のニーズにマンツーマンで対応できるようになりました。
ただし問題点は、その対応がヘルパーの力量次第の面があることです。ヘルパー一人ひとりにより支援の仕方が違うなど、質にばらつきがあることが心配です。知的障害の方の特性を理解した質の高いヘルパーを見つけることが難しいので、何とか育成していきたいと思います。
★問題点
次に、私がグループホームのバックアップに関わりながら感じている、限界や意外なもろさについてお話しします。
ひとつは、バックアップ施設から切り離した支援体制の弊害です。現在らいふでは実質的に11ホームのバックアップをしているのですが、制度上は入所施設がバックアップ施設になっています。そんな中、人的体制の限界が見えることがあります。例えば、世話人が体調不良などで突然休んでしまい、スタッフの手配がどうしてもできないことがあります。特にそのホームに重度の男性がいらっしゃる場合は、同性介護をするために男性スタッフが当たるようにするのですが、限界があります。そんなとき、本来のバックアップ施設に対応を依頼しました。入所施設は支援センターより多くの職員がいるので融通が利くのです。私自身は支援センターによるバックアップ体制に意義を感じているのですが、こういう限界に直面すると、支援体制を施設から完全に切り離すことはできないのだと再認識しました。
一方、ホームヘルプサービスとのうまいつきあいかたも課題です。当初ホームヘルプサービスは利用制限がないと言われ期待していたのですが、現実的には財源の問題から利用制限が出てきました。住人さんの地域生活を支えていくとき、ホームヘルプサービスは一手段に過ぎないと思います。休日サポーターとして活躍するボランティアなど、他の社会資源を見つけていく努力が必要でしょう。
もうひとつは、重度加算制度の限界です。現在らいふでは、重度加算制度の趣旨を拡大してとらえ、グループホームのコーディネートとバックアップにその補助金を使っています。グループホームの入居要件も制限が撤廃され、重度の方でも入れるようになりましたが、重度の方が多く入居されるならそれだけ、重度加算の制度ももっと充実させてほしいと思います。今の機能だけでは限界を痛感しています。
★まとめ
要件緩和の流れの中で、グループホームの運営主体についても、必ずしも施設が直接バックアップしなくてもよくなりました。どこかにセンターにバックアップを委託すればOKになりました。そうなれば、私たちらいふの手法も生きてくると思います。さらに発展して、バックアップ専門の機関がどんどんできて、蓄積したノウハウによってグループホームをサポートする体制が充実すれば、もっとグループホームが地域に増えていくと思います。
★柿本さんからの質問
グループホームの運営を施設が外部に委託すればもっと広がるとは思うのですが、そのとき、委託によってサービスが低下することはないでしょうか?
★回答
確かにその懸念もあります。ただ私は、施設が運営のノウハウを持てないまま、グループホームが増えていない現状をみて、らいふのようなバックアップ体制もありますよ、と提案しているのです。乱立によってサービスの低下が起きないように、今後バックアップの職員が問題意識を持って取り組んでいかなければならないと思います。
●「コミュニティで支え合う−デイサービス−」
川合宗次さん
(NPO法人岐阜羽島ボランティア協会理事長)

ぎふ羽島ボランティア協会の川合です。もともとは電気屋なのですが、今はNPO法人の運営をみんなでしています。
★なりたち
私たち「ぎふ羽島ボランティア協会」はできて21年になるのですが、もとは社会福祉協議会のボランティアセンターから分離独立した団体です。今は、21名の専従職員と30名ほどのボランティアスタッフが活動しています。
私たちは身体障害者デイサービスセンター「でい・あい」を開設しているのですが、今年で3期目に入りました。ボランティアセンターをしながらデイをはじめようとした理由をお話しします。もともと5年ほど前から「ボラ協サロン」という形でミニデイや一泊旅行をしていました。ただしかし、なかなか当事者の参加がありませんでした。それは、移送が困難で送迎が十分にできなかったからでした。月1回の「ボラ協サロン」では送迎サービスをはじめたのですが、このデイを毎日できたらいいね、と声が出ていました。そんな中、国のデイ事業の情報があったので飛びつきました。そんなことからデイを何とか形にしたのです。
★基本はボランティア
私たちはボランティア市民活動センターと生活支援センターのふたつの事業を展開しています。活動のベースはすべて、市民主体で考え、実行していきたいと思っています。21名の職員のうち6名が身体障害者ですので、私たちの施設に初めての方がいらっしゃると、誰が職員で誰がボランティアで誰が利用者かよく分からない、と言われます。
こうしたボランティアセンターをしていると、いかにマンパワーが必要か痛感します。ボランティアスクールを10年前から開いている一方で、3年前からホームヘルパー養成講座を開き、それも独自のカリキュラムを9時間追加して、障害を理解する専門的なボランティアを養成しようとしています。人材養成は重点的に力を入れています。
今年度から学校が土日休みになっていますが、私たちのデイも、4月から隔週土曜日、10月から毎週土曜日に利用できるようにしています。来年からはぜひ365日デイをしたいと思っています。そんな中で、何とか小中学生のボランティアに参加していただこうと思っています。子どもがボランティアに参加することで、利用者にも新しい刺激があるのではないかと思っています。
★活動の思い
私たちの活動にはいろんな分野の人が関わっています。発想が違う異業種の人たちが関わることによって、福祉サービスの新しい切り口を発見できるのではないかと期待しています。従来にない新しい発想があります。例えば今、運転免許の取得支援をしているのですが、そこに中古車の情報提供を付け加えています。また福祉教育のために学校に講師を派遣しているのですが、講師は当事者を含めて多様な面々が行っています。
そんな日々の活動の中、私たちはお笑いがメインです。ややもすると活動で疲れてしまいますので、お笑いは必要です。活動の中で必ずお笑いを考えています。
羽島市では、障害者生活支援センターをNPO法人で検討しています。周りの羽島郡を視野に入れて準備中です。また2年前から近郊の社会資源の調査をしているのですが、今年度は緊急雇用事業を受託して、福祉マップづくりをしています。
★課題
私たちの課題ですが、こういう組織は職員の中に有給の専従スタッフとボランティアが同居していることです。同じ土俵で働いているのですが、だからこそ業務に対する考え方の違いも鮮明に表れます。専従スタッフと同じ仕事をする無償ボランティアの共存・棲み分けについて7年前から勉強会をしています。最近もトラブルがあり、2週連続で勉強会を開きました。ボランティアと仕事を分かち合うスタッフの意識づくりが課題になっています。実際のところ、スタッフの採用については、ボランティアの推薦や障害者自身といった条件をつけています。また活動には当事者やその家族も企画に参加しているのですが、ボランティア活動への理解をみんなで深めていくことが本当に大切だと思います。
そしてまた、マンパワーがいかに大切か、質の高い人材をどう育てていくか、活動をいかに持続していくかが課題です。10年後にも活動の柱はボランティアが担ってほしいと思います。ボランティア主体の活動を続けながら、次の後継者を育成することが急務だと思っています。
●会場からの質問
今は福祉の流れから、地域生活のためと言って施設偏重の福祉施策を攻撃していますが、これからは在宅の福祉施策さえも必要ないような社会を作らなければならないと思います。いかがでしょうか?
★市川さん
問題意識としては、その通りだと思います。今までは施設で暮らすことが当たり前で、これからは地域で暮らすことが当然になると思います。しかしまだ、福祉サービスなしに地域で暮らすには、まだまだ地域が太っていないし、地域に体力がないと思います。段階として、ボランティア・NPOなどを含めたマンパワーの充実を実現し、その後に新たな課題を見つけていきたいと思います。
●柿本さんからの質問
皆さん、これまで比較的順調に活動されてきたなかで、様々な壁に突き当たったと思います。その壁をどう工夫して乗り越えて来たかお聞かせください。
★川合さん
私たちの団体は20数年前に社会福祉協議会から独立する形でできました。私たちが存在するのは、社協のおかげです。社協がいい意味でも悪い意味でもお手本になりました。社協の限界は行政の限界です。例えば障害者福祉計画についても、行政は形を作ってしまうと動きが止まってしまう傾向があります。そういうとき、私たち市民が参加することが重要だと思います。私たちが行動することで、行政(担当課)を動かしていくことが大切だと思います。
★鈴木さん
壁はたくさんあります。グループホームの制度は平成元年にスタートしました。ただ、住人さんがグループホームで生活していくときに、ある限界を感じています。年齢的・体力的にグループホームでは生活できなくなってきます。どんどん高齢になっていく住人さんはこれからどうやって生活していくのでしょうか。将来全介助が必要になったらどうしたらよいのでしょうか。ホームヘルプサービスの活用や世話人体制の整備など、地域で暮らすにあたってパーソナルアシスタントのような形の一層の支えが重要になると思います。
★市川さん
ホームヘルプサービスについて感じている壁なんですが、それは財政上の問題です。最初は緩やかな要綱でいろいろなサービスを提供できたのですが、サービスが広がるにつれ利用量が多くなります。本人の希望に応じたサービスをコーディネートしようとすると、行政の担当者が財政上の理由からか、サービスを押さえたがるようになりました。グループホームへのホームヘルプサービス提供など、利用者の希望に最大限応えるために、行政ともうまく話し合って制度を進めていきたいと思います。
●柿本さんのコメント
★5つのステップ
私は今日の話をいろいろと伺いながら、ポイントは「行政」ですね。これからの時代のキーワードは「地方分権」とともに「地域福祉」であると思います。地方分権の流れの中で、住んでいる地域のサービスの質はその首長次第で左右されます。私たちは暮らしやすい地域社会を実現するとき、やはり行政をパートナーにする必要があります。ただ私たちも行政と対等に対話するためには理論武装することが求められます。
当事者が地域生活を送っていくときの社会との関係性を5段階に分けたものがあります。
第1ステップの段階は「孤立」です。当事者が地域の中で孤立しています。
第2ステップでは当事者は福祉サービスを利用していますが、それは事業者が個々に支援している「縦割りの生活」の段階です。
第3ステップは「ケアマネジメント」の段階です。主体となる当事者の生活を中心にして、社会資源をつなぎ合わせ創造する段階です。
第4のステップになって当事者の支援に市民も参加するようになります。ただこの段階では当事者は受身的で特別な存在として位置づけられ、一方通行のサービス提供となります。
第5のステップでは、当事者も市民の一員としての役割を与えられ、サービス利用に関しても双方向のベクトルがあります。本人が主体となった利用と参加なのです。
これは実は平成14年1月28日の社会保障審議会の福祉部会の答申なのです。
★理念の再確認
理論的に行政を説得するときに、ひとつは制度・事業の検証があります。地域生活支援センター的事業にいくつかありますね。高齢者の在宅介護支援センター、障害児(者)地域療育等支援事業、身体障害児(者)の市町村障害者生活支援事業、精神障害者の地域生活支援事業、児童家庭支援センターといったものです。これらは本来は地域生活支援センターとしてトータルに動くべきではないでしょうか。どうしても人間を分野別に分けてしまうんですね。
もうひとつは、国が発した言葉を武器とすることです。社会福祉は最低の生活保障を実現するんだ、という過去の答申が今回再確認されました。ソーシャルインクルージョンと言いますか、一人ひとりの地域住民は包みあって、ハンディを負った人を一人の市民として位置づけ、先ほどの第5段階を実現しようという理論構成がなされています。
私たちの背後には、こうした理論的後ろ盾があるのです。こうした理念と理論を再確認して私の今日の最後の言葉に代えたいと思います。ありがとうございました。
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